作り手の分かる食材は、料理をする時にも力が入ります
出汁(だし)料理と日本酒とワインを楽しむ居酒屋「雷井土音」。この店の出汁料理とは、和食の基本である出汁の風味を生かした料理のことで、出汁を使った煮物や炒め物、鍋料理など、さまざまな形で出汁が使われています。
「いろいろな生産者さんから良い食材を提供していただいていますので、出汁で風味を付けることで、素材が持つうまみを引き出すようにしています」と店主の大泉雅揮さんは話します。
「この店は、もとは飲食店を数軒経営するオーナーの持ち物で、そこで店長として働いていました。その際、できるだけ生産現場へ行き、どんな人がどんな風に作っているかを知る大切さを教えていただきました。作り手の顔が分かると、料理を作る時にも力が入ります。権利を譲っていただき自分の店となった今も、その気持ちは変わりません。『若松ポークマン』へはまだおじゃまできずにいますが、注文時に電話で話をするだけで優しさが伝わってきます。こんな人たちが作る豚肉は美味しくないはずがない。早く農場に行きたいです」と言葉に力が入ります。
出汁に付けて食べる、あっさりとしたトンカツ
トンカツと言えばソースをかけて食べると思われがちですが、「若松ポークマンの出汁カツ」は、トンカツを天ぷら感覚で出汁に付けて食べる、ちょっと意外な組み合わせ。「かつおを使った薄めの出汁にさっと通して食べていただくことで、肉のうまみをストレートに感じていただけることと思います。『若松ポークマン』は、火を通しても柔らかいですし、何より肉の味がしっかりしていて、みずみずしい感じがします。トンカツには肩ロースを使っていますが、揚げ物にしてもしつこくならず、さっぱりと食べられます」。
肉の食感を十分に楽しめるよう、塊のまま揚げて厚めに切っています。そのため、肉はあらかじめ低温(65度で1時間ほど)で加熱。ほんのりピンクの肉色が見た目にもきれいです。
熱々のカツにそのまま噛りつくと、脂の中からじんわりと甘味が浸み出してきます。衣には細かいパン粉を使っているので、口当たりが柔らか。切り目から肉の味がストレートに伝わってくるので、肉を食べているという満足感があります。出汁に通すとすっきりとした味わいになり、同じ肉でも出汁があるとないとでは、随分と印象が変わるのが面白い。
ゆっくりと酒と料理の調和を楽しむ
大泉さんは、食材の生産者だけではなく日本酒の蔵元にも足を運んでいます。自らもお酒が好きだそうで、日本酒は常時40~50本、ワインは道産、国産、輸入物を揃えています。日本酒の銘柄はメニューには書いていないので、棚に並んでいる瓶を見ながら好きなものを選ぶもよし、好みの味を伝えるとお薦めのものを紹介してくれます。テーブル席を使った宴会にも対応しているので、飲み放題(2名より2時間、1人2,500円、税別)も人気のよう。
店名の「雷井土音」の由来をお聞きすると、雨と田の文字からなる「雷」で日本酒に使う米、井は米作りや酒造りに使う水、土はブドウが育つ土壌を表し、そこに音という文字が加わることで日本酒とワイン、食事のハーモニーを楽しんでもらうという意味合いなのだそう。
出汁カツにはどんなお酒を合わせるか。自分流のハーモニーを探しに行くのも一興ですね。
雷井土音(らいどおん)
札幌市中央区南3条西3丁目都ビル2階
TEL:011-219-5623
17:00~24:00 (23:00フードLO、23:30ドリンクLO)、
無休(研修等での臨時休業あり)
Pork information
道南のせたな町にある家族経営の農場「高橋畜産」。ここで生産する「若松ポークマン」は、安心して食べてもらえるよう、農場HACCP、JGAP、SPF豚の3種類の衛生管理や食の安全に関する認定を受けています。しっかりと旨味のある赤身とさっぱりとした脂が特徴で、飼料に地元の米を使用することで、脂に程よい甘さが増しています。
※記事の内容は、2020年3月現在のものです。