ふるさとで育った豚肉の美味しさを広めたい
平岸通りから奥に入った小道にひっそりとある「米愛豚とおばんさい みかみ」。白いのれんをくぐると、中はカウンターとテーブル席が2つの小ぢんまりした空間。「人知れずやっている店といった感じを出したかったのですが、敷居が高そうだし、入り口も分かりにくいと良く言われます。来ていただくと、そんな店じゃないことが分かるのですけどね」と店主の三上裕人さんは笑います。
ここで使っている豚肉は、厚真町の「エフティーファーム」が生産する「米愛豚(まいらぶた)」。厚真町は三上さんの出身地でもあり、この豚とは浅からぬ縁があるのだそう。
「もともとはうちも農家でしたが、土地を手放してからは祖父と父が農場長として、エフティーファームに勤めていました。農場でブランド豚を作り始めた頃から試食もしていましたし、僕が飲食の道に進んでいたこともあり、米愛豚を使った店を名古屋に出店する際には、開店時から手伝わせていただきました。ですから、この豚を使わない手はないし、この美味しさを広めたいとも思っています」。
さらりとした後味で、すっきり食べられるとんかつ
肉の美味しさをストレートに伝える料理として三上さんが選んだのは、とんかつ。「馴染みがあるので、分かりやすいでしょう」とも話します。
とんかつは、ヒレとロースの2種類で、手始めには一度に両方食べられる合い盛りが人気。肉を味わうには、まずは何もつけずにそのまま食べるのがお薦めです。ヒレはしっとりとした柔らかさの中に適度な弾力があり、噛んでいるうちにうまみが染み出してきます。ロースは脂と溶け合うことでコクが増し、脂の甘味も楽しめます。いずれも、さらりとした後味で、お腹に重たくないのでペロリとたいらげてしまいます。
ヒレには細かく挽いたパン粉を、ロースには粗挽きの生パン粉を使うことで肉質に合った食感に仕上げているのは、三上さんのさりげないこだわりです。とんかつには、おかずが1品と玉子焼きが付いているのもうれしいですね。
山椒が効いたトンテキは、ごはんにもお酒にも合います
肉を堪能するにはトンテキもお薦め。北海道では馴染みがうすい料理ですが、三重県四日市の名物で、現地では濃厚なソースで味付けし、ニンニクたっぷり。ここは昼でも食べやすいようニンニクは使わず、しょうゆベースのタレに山椒をピリリと効かせています。ごはんにも、お酒のつまみにもなる一品です。
ちなみに、米愛豚は出荷の2カ月程前からエサに米を混ぜていますが、農場で米を作っていることもあり、飼料米ではなく、人が食べるものと同じ米を与えています。店で出しているの「ななつぼし」がそれで、ちょっと贅沢な豚といえますね。
三上さんは小学生の頃から料理をするのが好きで、「食べた人に喜んでもらうのが楽しかった」と言うように、兄の後を追うようにして調理師学校へ進学し、飲食の道へ進みました。地元・厚真町では、お兄さんが「食空間ゆるり」を経営。豚肉を通じて、兄弟そろってふるさとを応援しています。
米愛豚とおばんさい みかみ
札幌市豊平区平岸2条8丁目3-1 アール28
TEL:090-7515-0710
11:30~14:30(ラストオーダー/14:00)
17:00~21:00
日曜休
Pork Information
「米愛豚(まいらぶた)」とは、厚真町にある「エフティーファーム」が育てているブランド豚で、出荷する60日程前からエサに自家製の米を混ぜることで、きめ細やかで臭みを抑えた肉質に仕上げています。その名からも想像がつくように、たっぷりの愛情を注いで育てることで、ストレスも少なく元気に育っています。
※この記事は2021年3月現在のものです。